🔰 はじめに
自治体の情報システムには高度なセキュリティが求められる一方、国や他自治体との円滑な情報共有も必要です。この相反する要求を両立させるのがLGWAN(総合行政ネットワーク)です。インターネットから隔離された閉域ネットワークにより、安全性を確保しながら全国の自治体・国の機関を接続し、行政事務のデジタル化を支えています。本記事では、LGWANの定義から背景、効果、課題、関連政策まで、官公庁・自治体職員が理解すべきポイントを解説します。
📖 LGWANとは
LGWAN(Local Government Wide Area Network:総合行政ネットワーク)とは、地方公共団体を相互に接続する行政専用の閉域ネットワークです。全国の都道府県、市区町村、一部事務組合などの地方公共団体と、総務省・デジタル庁などの国の機関を高速・高セキュリティで接続し、情報共有や電子申請などのサービスを提供します。
LGWANの基本構成
LGWAN-ASP
LGWAN上で提供されるアプリケーションサービス
サービス基盤
こんな自治体におすすめ
LGWAN上で安全にアプリケーションを利用したい自治体
LGWAN接続サービス
自治体がLGWANに接続するためのサービス
接続基盤
こんな自治体におすすめ
LGWANへの接続環境を整備したい自治体
LGWAN-メール
自治体間・国との安全なメール通信
通信サービス
こんな自治体におすすめ
セキュアなメール通信を実現したい自治体
LGWANで利用できる主なサービス
| サービス分類 | 具体的なサービス | 提供主体 | 利用効果 |
|---|---|---|---|
| 電子申請 | eLTAX(地方税ポータル) | 地方税電子化協議会 | 法人税申告のオンライン化 |
| 電子申請 | マイナポータル連携 | デジタル庁 | 住民向けオンライン申請 |
| 電子入札 | 電子入札システム | 各都道府県・政令市 | 入札手続の効率化 |
| 情報共有 | 文書交換システム | 総務省 | 自治体間の公文書交換 |
| 情報共有 | 自治体情報セキュリティクラウド | 総務省 | セキュリティ対策の強化 |
| 業務システム | 共同利用型基幹系システム | 複数自治体共同 | システムコスト削減 |
LGWANの特徴:
- ✅ 閉域ネットワーク: インターネットから隔離された専用回線
- ✅ 高速通信: 広帯域の通信回線で大容量データもスムーズ
- ✅ 高可用性: 冗長構成により安定した通信を保証
- ✅ 全国接続: 全1,788自治体(都道府県・市区町村・一部事務組合)が接続
🏛️ LGWANの背景と目的
LGWANは、1990年代後半の行政情報化推進の流れの中で整備されました。当時、各自治体が個別に専用線を構築していたため、コストが高く、相互接続も困難でした。全国規模の共通ネットワーク基盤を整備することで、コスト削減とセキュリティ確保の両立を図ることが目的でした。
LGWAN整備の背景
行政情報化の進展
1990年代後半の電子政府・電子自治体の推進
政策背景
こんな自治体におすすめ
行政情報化の歴史的経緯を理解したい職員
個別専用線の課題
各自治体が個別に専用線を構築するコスト負担
コスト課題
こんな自治体におすすめ
ネットワークコスト削減を目指す自治体
セキュリティの確保
インターネット経由の通信リスクへの対応
セキュリティ
こんな自治体におすすめ
情報セキュリティを最優先する自治体
LGWANの目的
- セキュリティの確保: 外部インターネットから隔離された閉域ネットワークで安全性を確保
- コスト削減: 共同利用により専用線コストを削減(個別構築比30-50%削減)
- 行政事務の効率化: 自治体間・国との情報共有を迅速化
- 電子申請の実現: 住民・企業向けオンライン申請サービスの基盤
- 共同利用の促進: システムの共同利用によるスケールメリット
📊 LGWANの影響と効果
LGWAN導入により、自治体の業務効率化とセキュリティ向上が大きく前進しました。情報共有の迅速化、通信コストの削減、電子申請サービスの実現など、多方面で効果が現れています。ここでは、LGWANがもたらす具体的な影響と効果を、実際の数字や事例を交えて解説します。
LGWAN導入の効果
🏛️ E県(人口250万人)の想定例
導入前の課題:
- 市町村との情報共有に郵送で2-3日かかる
- 個別専用線の維持コストが年間5,000万円
- セキュリティインシデントのリスク
施策: LGWAN導入・全市町村接続・文書交換システム活用
導入効果:
- ✅ 情報共有: 郵送2-3日 → 即時(リアルタイム連携)
- ✅ 通信コスト: 年間5,000万円 → 3,000万円(40%削減)
- ✅ セキュリティ: 外部攻撃リスク大幅低減
コスト: LGWAN接続費用 年間3,000万円(県全体) ROI: 初年度から投資回収(専用線削減効果)
🌳 F市(人口5万人)の想定例
導入前の課題:
- 小規模自治体で専用線構築が困難
- 電子申請サービスを提供できない
- 国・県との連絡が郵送・FAX中心
施策: LGWAN接続・LGWAN-ASPで電子申請サービス導入
導入効果:
- ✅ 電子申請: 年間1,000件のオンライン申請受付
- ✅ 文書交換: 郵送・FAX月200件 → LGWAN-メール化(即時化)
- ✅ システムコスト: 共同利用で50%削減
コスト: LGWAN接続費用 年間200万円 ROI: 2年で投資回収(電子申請効果・郵送費削減)
LGWANの効果測定指標
| 指標カテゴリ | 測定項目 | 測定方法 | 目標例 |
|---|---|---|---|
| 接続状況 | LGWAN接続率 | 接続自治体数 ÷ 総自治体数 × 100 | 100%(全自治体接続) |
| 利用状況 | LGWAN-ASP利用数 | 利用サービス数・利用者数 | 前年比10%増 |
| 効率化 | 情報共有時間短縮 | 郵送・FAXからLGWAN化した件数 | 郵送件数50%削減 |
| コスト | 通信コスト削減 | LGWAN導入前後の通信費比較 | 30%削減 |
| セキュリティ | インシデント件数 | 外部攻撃・情報漏えい件数 | ゼロ件維持 |
| サービス | 電子申請利用率 | オンライン申請件数 ÷ 総申請件数 | 30%以上 |
LGWAN効果測定のポイント:
- ✅ 接続の完全性: 全組織・全拠点のLGWAN接続を確認
- ✅ 利用の促進: LGWAN-ASPなどのサービス利用率を向上
- ✅ コスト把握: 通信費削減効果を定量的に測定
- ✅ セキュリティ監視: インシデント発生状況を継続的にモニタリング
⚠️ LGWANの課題と対策
LGWANには多くのメリットがある一方で、インターネット分離による利便性低下、クラウドサービス利用の制約、運用コストなどの課題も存在します。これらの課題を理解し、適切な対策を講じることで、LGWANの効果を最大化できます。ここでは、代表的な課題とその対策を解説します。
LGWANの主な課題
インターネット分離
LGWANとインターネットが分離され、利便性が低下
利便性の課題
こんな自治体におすすめ
業務効率と安全性のバランスを取りたい自治体
クラウド利用の制約
民間クラウドサービスとの接続が制限される
システム連携の課題
こんな自治体におすすめ
クラウド活用とセキュリティの両立を目指す自治体
運用コストの負担
LGWAN接続・維持に継続的なコストが発生
コストの課題
こんな自治体におすすめ
限られた予算でネットワークを維持したい自治体
課題別の対策
| 課題 | 対策 | 具体的施策例 | 期待効果 |
|---|---|---|---|
| インターネット分離 | ゲートウェイ方式の導入 | LGWAN端末からインターネットへのゲートウェイ接続 | 安全性を保ちつつ利便性向上 |
| インターネット分離 | 画面転送方式 | リモートデスクトップでインターネット端末を操作 | 業務効率の改善 |
| クラウド利用の制約 | LGWAN-ASPの活用 | LGWAN上で提供されるクラウドサービスを利用 | 安全なクラウド活用 |
| クラウド利用の制約 | 自治体情報セキュリティクラウド | 総務省推奨のセキュリティクラウドを経由 | パブリッククラウドの安全利用 |
| 運用コストの負担 | 共同利用の推進 | 複数自治体でネットワーク機器を共同調達 | コスト削減(20-30%) |
| 運用コストの負担 | 自治体クラウドの活用 | システムをクラウド化し、LGWAN経由で利用 | 運用負担の軽減 |
LGWAN運用で避けるべき失敗:
- ❌ 過度な分離: インターネットとの完全分離で業務効率が極端に低下
- ❌ セキュリティ対策の形骸化: LGWAN接続だけで安心し、端末管理が疎かに
- ❌ 利用促進の不足: LGWAN-ASPなどのサービスを活用せず、投資対効果が低い
- ❌ コスト管理の放置: 接続費用の継続的な見直しを怠り、予算を圧迫
📜 関連する政策・制度
LGWANは、国の電子政府・電子自治体推進政策と密接に関連しています。デジタル・ガバメント実行計画、自治体DX推進計画、情報セキュリティポリシーなど、複数の政策・制度の一環として整備・運用されています。ここでは、LGWANに関連する主要な政策・制度を紹介します。
国の関連政策
| 政策・制度 | 主管省庁 | 概要 | LGWANとの関連 |
|---|---|---|---|
| デジタル・ガバメント実行計画 | デジタル庁 | 行政サービスのデジタル化を推進 | LGWANは行政ネットワーク基盤 |
| 自治体DX推進計画 | 総務省 | 自治体のデジタル化を重点推進 | LGWAN活用が前提 |
| 電子政府推進計画 | デジタル庁 | 電子政府の実現を目指す | 国と自治体の連携にLGWAN活用 |
| 自治体情報セキュリティ対策 | 総務省 | 自治体の情報セキュリティ強化 | LGWAN経由のセキュリティクラウド |
| 行政手続オンライン化法 | 総務省 | 行政手続の原則オンライン化 | LGWAN上で電子申請を実現 |
自治体の関連計画
- 情報化推進計画: 自治体の情報システム整備計画で、LGWAN接続を基盤として明記
- 情報セキュリティポリシー: 自治体のセキュリティ方針で、LGWAN利用を規定
- DX推進計画: デジタル化推進計画で、LGWAN活用を重点施策に位置づけ
- 総合計画: 最上位計画で、行政サービスのデジタル化基盤としてLGWANを位置づけ
- 業務継続計画(BCP): 災害時の業務継続にLGWANのバックアップ機能を活用
関連する補助金・支援制度
LGWAN関連で活用できる補助金例:
- 自治体情報システム標準化・共通化補助金: 総務省の補助金で、LGWAN接続システムの整備も対象
- 自治体情報セキュリティ対策補助金: セキュリティ対策(LGWAN経由のクラウド接続等)を支援
- デジタル基盤改革支援補助金: デジタル庁の補助金で、行政ネットワーク整備を支援
- 自治体DX推進関連の特別交付税措置: LGWAN接続・活用に係る特別交付税措置
💡 よくある質問
LGWANに関して、自治体職員からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。接続方法・セキュリティ・運用コストなどの実務的な疑問に答えます。
Q1: LGWANに接続するにはどうすればよいですか?
A: LGWAN接続には3つのステップがあります。①接続申請: 総務省が指定するLGWAN接続事業者に接続申請を提出、②回線敷設: LGWAN接続事業者が自治体庁舎までLGWAN回線を敷設、③ネットワーク機器設定: ファイアウォール・ルーター等を設定し、自治体LANとLGWANを接続。接続には数ヶ月かかるため、計画的に進めることが重要です。
Q2: LGWANとインターネットは同時に使えますか?
A: セキュリティ上の理由から、原則としてLGWAN端末とインターネット端末は分離します。ただし、業務効率を考慮し、以下の方法で両方を利用できます。①ゲートウェイ方式: LGWAN端末からゲートウェイ経由でインターネットにアクセス(ログ取得・ウイルスチェック実施)、②画面転送方式: LGWAN端末からリモートデスクトップでインターネット端末を操作、③物理分離: 2台の端末(LGWAN用・インターネット用)を並べて使用。自治体の情報セキュリティポリシーに応じて選択します。
Q3: LGWANのセキュリティは本当に安全ですか?
A: LGWANは高いセキュリティを確保していますが、絶対ではありません。①閉域ネットワーク: 外部インターネットから隔離され、外部攻撃リスクは大幅に低減、②ファイアウォール: LGWAN接続点に高性能ファイアウォールを配置、③ログ監視: 通信ログを記録・監視し、不正アクセスを検知。ただし、内部からのUSBメモリ持ち出しや、端末のマルウェア感染には別途対策が必要です。LGWAN接続だけで安心せず、総合的なセキュリティ対策を講じましょう。
Q4: LGWANの接続費用はどれくらいですか?
A: 自治体の規模や回線速度により異なりますが、一般的には年間100万円~500万円程度です。内訳は、①接続費用: LGWAN接続事業者への年額利用料(回線速度により異なる)、②機器費用: ファイアウォール・ルーター等のネットワーク機器(初期費用+保守費用)、③運用費用: 設定変更・障害対応等の運用保守費用。小規模自治体では共同利用により負担を軽減できます。
Q5: クラウドサービスはLGWAN経由で使えますか?
A: 一部のクラウドサービスはLGWAN経由で利用できます。①LGWAN-ASP: LGWAN上で提供されるクラウドサービス(電子申請・電子入札等)は直接利用可能、②自治体情報セキュリティクラウド: 総務省推奨のセキュリティクラウドを経由すれば、パブリッククラウド(AWS・Azure等)も利用可能、③民間SaaS: 一部のSaaSベンダーがLGWAN-ASP経由でサービス提供。クラウドバイデフォルト原則に沿って、積極的にLGWAN経由のクラウドサービスを活用しましょう。
Q6: LGWANはどれくらいの自治体が接続していますか?
A: 全国の都道府県・市区町村・一部事務組合の全1,788団体が接続済みです(2024年時点)。接続率は100%に達しており、LGWAN ネットワークは日本の行政基盤として完全に定着しています。今後は接続率の維持だけでなく、LGWAN-ASPなどのサービス利用率を高めることが重要です。
Q7: LGWANが障害で使えなくなったらどうすればよいですか?
A: LGWANは高い可用性を確保していますが、万一の障害に備えて以下の対策を講じましょう。①冗長構成: LGWAN回線を複数系統(主回線・副回線)で構成し、一方が障害時も継続利用、②バックアップ手段: 緊急時は郵送・FAX・電話等の従来手段に切り替え、③BCP対応: 業務継続計画(BCP)にLGWAN障害時の対応を明記、④連絡体制: LGWAN接続事業者との緊急連絡体制を整備。LGWAN運営主体が24時間365日の監視・保守を実施していますが、自治体側も備えが必要です。
📝 まとめ
30秒で分かる結論
忙しいあなたのために、先に答えをお伝えします
LGWAN導入の3つのメリット
- 高度なセキュリティ - 外部から隔離された閉域ネットワークで情報資産を保護
- 効率的な情報共有 - 自治体間・国との連携を迅速化し、業務効率を向上
- コスト削減 - 共同利用により専用線コストを30-50%削減
次のステップ
✅ 接続確認: 自治体の全拠点がLGWANに接続されているか確認 ✅ サービス活用: LGWAN-ASPなどのサービスを積極的に利用 ✅ セキュリティ強化: LGWAN接続だけでなく、総合的なセキュリティ対策を実施 ✅ コスト最適化: 通信費・機器費を定期的に見直し、共同利用を検討 ✅ 職員教育: LGWANの適切な利用方法・セキュリティ意識を職員に周知
🔍 官公庁・自治体用語集
さらに詳しい用語解説は、以下のページでご確認いただけます。