📖 はじめに
勘定項目(勘定科目)とは、会計取引を記録・分類するための項目名です。自治体では、公会計制度の導入により、発生主義・複式簿記による会計処理が行われるようになり、企業会計で使用される勘定項目が必要になりました。本記事では、自治体で使用する主な勘定項目を一覧形式で紹介し、それぞれの意味と使い方を解説します。なお、勘定項目の詳細は自治体により異なる場合があるため、実際の運用では各自治体の会計規則を確認してください。
💰 資産の勘定項目
資産とは、自治体が保有する財産であり、現金・預金、固定資産、未収金などが含まれます。貸借対照表の借方(左側)に記載されます。
流動資産
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 現金 | 手元現金 | (借)現金 10,000 /(貸)○○収入 10,000 |
| 預金 | 金融機関への預金 | (借)預金 1,000,000 /(貸)現金 1,000,000 |
| 未収金 | まだ回収していない債権 | (借)未収金 50,000 /(貸)使用料収入 50,000 |
| 前払金 | 先払いした費用 | (借)前払金 30,000 /(貸)預金 30,000 |
| 貯蔵品 | 在庫品(切手、印紙等) | (借)貯蔵品 5,000 /(貸)現金 5,000 |
固定資産
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 土地 | 所有する土地 | (借)土地 10,000,000 /(貸)預金 10,000,000 |
| 建物 | 庁舎、公共施設等の建物 | (借)建物 50,000,000 /(貸)未払金 50,000,000 |
| 建物減価償却累計額 | 建物の減価償却累計 | (借)減価償却費 1,000,000 /(貸)建物減価償却累計額 1,000,000 |
| 工作物 | 道路、橋梁、上下水道施設等 | (借)工作物 20,000,000 /(貸)未払金 20,000,000 |
| 工作物減価償却累計額 | 工作物の減価償却累計 | (借)減価償却費 500,000 /(貸)工作物減価償却累計額 500,000 |
| 物品 | 備品、車両等 | (借)物品 500,000 /(貸)預金 500,000 |
| 物品減価償却累計額 | 物品の減価償却累計 | (借)減価償却費 100,000 /(貸)物品減価償却累計額 100,000 |
| 建設仮勘定 | 建設中の資産 | (借)建設仮勘定 5,000,000 /(貸)未払金 5,000,000 |
減価償却累計額とは
固定資産は時間の経過とともに価値が減少します。この価値の減少分を累計したものが「減価償却累計額」です。貸借対照表では、固定資産から減価償却累計額を差し引いた「簿価」が資産として計上されます。
例: 建物 50,000,000円 - 建物減価償却累計額 10,000,000円 = 簿価 40,000,000円
📊 負債の勘定項目
負債とは、自治体が将来支払う義務がある債務です。貸借対照表の貸方(右側)に記載されます。
流動負債
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 未払金 | まだ支払っていない債務 | (借)物品費 100,000 /(貸)未払金 100,000 |
| 前受金 | 先に受け取った収入 | (借)現金 50,000 /(貸)前受金 50,000 |
| 預り金 | 職員の所得税、住民税等の預り金 | (借)給与 200,000 /(貸)預金 150,000 (貸)預り金 50,000 |
| 賞与引当金 | 翌年度支払う賞与の見積額 | (借)賞与引当金繰入額 1,000,000 /(貸)賞与引当金 1,000,000 |
固定負債
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 地方債 | 地方公共団体の借入金 | (借)預金 100,000,000 /(貸)地方債 100,000,000 |
| 退職給付引当金 | 将来支払う退職金の見積額 | (借)退職給付費用 5,000,000 /(貸)退職給付引当金 5,000,000 |
| 損失補償等引当金 | 損失補償契約に基づく引当金 | (借)損失補償等引当金繰入額 100,000 /(貸)損失補償等引当金 100,000 |
引当金とは
将来発生する可能性が高い費用や損失を、あらかじめ見積もって計上しておくものです。例えば、退職給付引当金は、職員が将来退職する際に支払う退職金を、在職期間に応じて毎年積み立てる会計処理です。
📈 純資産の勘定項目
純資産とは、資産から負債を差し引いた金額で、自治体の正味の財産を表します。貸借対照表の貸方(右側)に記載されます。
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 固定資産等形成分 | 固定資産の取得財源 | (借)建物 50,000,000 /(貸)未払金 50,000,000 (借)固定資産等形成分 50,000,000 /(貸)資産形成充当財源 50,000,000 |
| 余剰分(不足分) | 流動資産から流動負債を差し引いた金額 | 純資産変動計算書で計算 |
| 他団体出資等分 | 他団体からの出資金等 | (借)現金 10,000,000 /(貸)他団体出資等分 10,000,000 |
純資産の考え方
企業会計では「資本金」「利益剰余金」などがありますが、自治体では「固定資産等形成分」「余剰分(不足分)」などが使われます。これは、自治体が利益を追求する組織ではなく、公共サービスを提供する組織であるためです。
💸 費用の勘定項目
費用とは、行政サービスを提供するために使った経費です。行政コスト計算書に記載されます。
人件費
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 職員給料 | 職員の給料 | (借)職員給料 5,000,000 /(貸)預金 4,000,000 (貸)預り金 1,000,000 |
| 賞与 | 職員の賞与 | (借)賞与 2,000,000 /(貸)預金 1,600,000 (貸)預り金 400,000 |
| 退職給付費用 | 退職給付引当金の繰入額 | (借)退職給付費用 3,000,000 /(貸)退職給付引当金 3,000,000 |
| 法定福利費 | 社会保険料の事業主負担分 | (借)法定福利費 800,000 /(貸)預金 800,000 |
物件費等
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 物品費 | 消耗品、事務用品等 | (借)物品費 50,000 /(貸)未払金 50,000 |
| 委託料 | 業務委託費 | (借)委託料 500,000 /(貸)未払金 500,000 |
| 使用料 | 施設使用料、リース料等 | (借)使用料 100,000 /(貸)預金 100,000 |
| 光熱水費 | 電気、ガス、水道料金 | (借)光熱水費 200,000 /(貸)未払金 200,000 |
| 旅費 | 出張旅費 | (借)旅費 30,000 /(貸)預金 30,000 |
その他の費用
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 固定資産の減価償却費 | (借)減価償却費 1,000,000 /(貸)建物減価償却累計額 1,000,000 |
| 維持補修費 | 施設の修繕費 | (借)維持補修費 300,000 /(貸)未払金 300,000 |
| 補助費等 | 補助金、負担金 | (借)補助費等 1,000,000 /(貸)預金 1,000,000 |
| 公債費 | 地方債の元利償還金 | (借)地方債償還元金 5,000,000 /(貸)預金 5,000,000 (借)地方債利子 200,000 /(貸)預金 200,000 |
💴 収益の勘定項目
収益とは、自治体が得た収入です。行政コスト計算書に記載されます。
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳例 |
|---|---|---|
| 地方税 | 住民税、固定資産税等 | (借)現金 10,000,000 /(貸)地方税 10,000,000 |
| 地方交付税 | 国からの地方交付税 | (借)預金 50,000,000 /(貸)地方交付税 50,000,000 |
| 使用料収入 | 施設使用料 | (借)未収金 50,000 /(貸)使用料収入 50,000 |
| 手数料収入 | 手数料収入 | (借)現金 10,000 /(貸)手数料収入 10,000 |
| 国庫支出金 | 国からの補助金 | (借)預金 10,000,000 /(貸)国庫支出金 10,000,000 |
| 都道府県支出金 | 都道府県からの補助金 | (借)預金 5,000,000 /(貸)都道府県支出金 5,000,000 |
| 財産収入 | 財産の貸付料、売払代金等 | (借)預金 100,000 /(貸)財産収入 100,000 |
| 寄附金収入 | 寄附金 | (借)現金 500,000 /(貸)寄附金収入 500,000 |
💡 活用のポイント
勘定項目一覧を効果的に活用するためのポイントを解説します。
1. 仕訳を行う際の科目選択
仕訳の基本ルール
- 借方(左側): 資産の増加、負債の減少、費用の発生
- 貸方(右側): 資産の減少、負債の増加、収益の発生
例: 備品を現金で購入した場合
- 借方: 物品(資産の増加)
- 貸方: 現金(資産の減少)
仕訳: (借)物品 100,000 /(貸)現金 100,000
2. 財務書類作成時の科目設定
📊 貸借対照表(BS)
資産・負債・純資産を記載
-
借方(左側): 資産
- 流動資産: 現金、預金、未収金等
- 固定資産: 土地、建物、工作物等
-
貸方(右側): 負債・純資産
- 流動負債: 未払金、預り金等
- 固定負債: 地方債、退職給付引当金等
- 純資産: 固定資産等形成分、余剰分等
💰 行政コスト計算書(PL)
費用・収益を記載
-
借方(左側): 費用
- 人件費: 職員給料、賞与等
- 物件費等: 物品費、委託料等
- その他: 減価償却費、維持補修費等
-
貸方(右側): 収益
- 地方税、地方交付税等
- 使用料収入、手数料収入等
3. 経費精算システムでの科目設定
- 旅費(出張旅費、日当等)
- 物品費(消耗品、事務用品等)
- 光熱水費(電気、ガス、水道)
- 使用料(施設使用料、駐車場代等)
- 委託料(外部委託費)
- その他の経費(会議費、研修費等)
4. 公会計制度への対応
公会計制度での注意点
- 現金主義の仕訳だけでなく、発生主義の仕訳も必要
- 減価償却費の計上を忘れずに
- 引当金(退職給付引当金、賞与引当金等)の計上
- 固定資産台帳との整合性を確保
詳細は「公会計制度とは」を参照
❓ よくある質問
勘定項目に関して、自治体の担当者からよく寄せられる質問と回答をまとめました。
Q1: 勘定科目と勘定項目は何が違いますか?
A: 基本的には同じ意味です。「勘定科目」と「勘定項目」は同義語として使われることが多いですが、自治体によっては「勘定項目」、企業会計では「勘定科目」という用語を使う傾向があります。
Q2: 自治体の勘定項目は企業と同じですか?
A: 基本的な考え方(資産・負債・純資産・費用・収益)は同じですが、項目名や分類が異なります。例えば、自治体では「地方税」「地方交付税」などの科目がありますが、企業にはありません。また、純資産の構成も異なります。
Q3: 勘定項目は自治体ごとに違いますか?
A: はい、自治体により多少異なります。総務省の「統一的な基準」で標準的な勘定項目が示されていますが、各自治体の実情に応じてカスタマイズされています。
Q4: 仕訳がわからない場合、どうすればよいですか?
A: 以下の方法で確認してください。
- 自治体の会計規則・マニュアルを確認
- 会計担当者に相談
- 過去の類似取引の仕訳を参考にする
- 総務省の「地方公会計マニュアル」を参照
Q5: 減価償却費はどうやって計算しますか?
A: 一般的には「定額法」で計算します。
- 減価償却費 = (取得価額 - 残存価額) ÷ 耐用年数
- 例: 取得価額1,000万円、残存価額0円、耐用年数50年の建物 → 減価償却費 = 1,000万円 ÷ 50年 = 20万円/年
詳細は固定資産台帳の管理規程を確認してください。
Q6: 未払金と未収金の違いは何ですか?
A:
- 未払金: 自治体が支払うべき債務で、まだ支払っていないもの(負債)
- 未収金: 自治体が受け取るべき債権で、まだ回収していないもの(資産)
例: 物品を購入したが代金をまだ支払っていない → 未払金 例: 使用料を請求したがまだ入金されていない → 未収金
📝 まとめ
30秒で分かる結論
忙しいあなたのために、先に答えをお伝えします
勘定項目の5つの分類
- 資産 - 現金、預金、土地、建物、工作物、物品等
- 負債 - 未払金、地方債、退職給付引当金等
- 純資産 - 固定資産等形成分、余剰分等
- 費用 - 人件費、物件費、減価償却費、維持補修費等
- 収益 - 地方税、地方交付税、使用料収入等
次のステップ
✅ 自治体の会計規則で使用する勘定項目を確認する ✅ 仕訳の基本ルールを理解する(借方・貸方) ✅ 経費精算システムに勘定項目を設定する ✅ 財務書類作成時の科目選択を確認する ✅ 公会計制度への対応を進める
🔍 経費精算システムの比較・選定
実際の導入事例やシステム比較は、以下のページで詳しくご確認いただけます。
